数あるジプリ作品の中で、自然と人間の関わりを重要なテーマに置いたこの作品。
単なる自然破壊だけでなく、目に見えないものへの崇拝や嫌悪、差別など人間の意識の深くまで問いかけるような作品になっています。
そしてその中には、様々な都市伝説が噂されているのをご存知でしょうか?
それらをこれからご紹介してゆきたいと思います。
キャラクターの意味
この物語に登場するキャラクター達はそこに存在するだけで意味のある者もいます。
簡単に紹介します。
アシタカ
本作を代表するキャラの一人、主人公・「アシタカ」
彼が象徴しているのは山に住む妖怪と人間の対立の中間にあたる「中立」というワードであるといわれています。
また、宮崎監督はこのアシタカを「究極のイケメン」として製作していたようで製作最中には
「オレはいま一世一代の美形を描いてるんだ」
と語っていたという逸話があります。
サン
本作のヒロイン、「サン」
サンは人間でありながらも妖怪である山犬たちに育てられ、人間社会と森の橋渡し的な存在です。
エボシ御前(死ぬ予定だった?)
主人公の前に立ちふさがるキャラとして人気があるエボシ御膳。
そのキャラ設定は合理主義的で自然を踏みつぶす文明・もしくは現代社会の象徴として作られています。
ですが、彼女は終盤で死ぬ予定だったようです。
しかし、彼女が死んでしまえば彼女を慕う庶民が生き場を失うということで生きながらえることになりました。
たたら場の女たち
エボシ御前が治める集落(山内)では“たたら場”といわれる鉄を生み出す製鉄所がありました。
自然を破壊し、武器の元となる鉄を生み出す皮肉なメタファーとして“たたら場”が存在しています。
ハンセン病の患者(収容施設だった?)
もののけ姫には包帯をぐるぐる巻きにした人々が作業する仕事場があります。
以前から謎の多かった彼らですが、後に宮崎監督は彼らの描写とハンセン病との関わり日ついて認める発言がありました。
監督曰く
「このような人たちが実際にいることをアニメを通してわかってほしかった」
とのことでした。
エボシ御前はこういった人たちを重要な労働力として面倒を見ていたのでした。
このような側面もあることから、エボシ御前を純粋な悪役にせず生存させたともいわれています。
山犬・モロの君
ヒロインのサン、その家族である山犬たちはそれぞれがライオンやトラを越えるような巨体をしています。
彼らのモデルはかつて日本にいたといわれている「ニホンオオカミ」と言われていますが、映画の山犬ほどオオカミは大きくはありません。
なぜここまで大きいのか?それは「昔の生き物は今の生き物より大きかったから」といわれています。
実際にここまで巨大なオオカミは海外では確認されていて北米には「ダイアウルフ」と言う非常に巨大なオオカミがいました。
彼ら山犬一族を束ねる母親の“モロの君”はサンの母親でもあり、最初は主人公のアシタカにも高圧的でしたが、徐々に彼の存在を認めるようになっていきます。
イノシシ・乙事主
本作で印象的な最期みせる乙事主(おつことぬし)。
四本牙の巨大白猪神、五百歳の最長老。
彼は猪神の長ということですが、人間との戦いでタタリ神に変貌する姿は圧巻でした。
彼らはなぜ人間を嫌悪しているか、彼ら猪神を人間は狩り捕食しようとしていることが猪神にとっては許せなかったのだといわれています。
シシ神
森の守り神として登場する“シシ神”、昼の姿は穏やかな草食動物のようですが、夜になると不気味な巨人ダイダラボッチになります。
世のすべての物に生命を与えることもでき、奪うこともできる、まさしく神そのものです。
これは自然そのものを示しています。
自然は災害で容赦なく人間など生きるもの全ての命を奪い、山河の形さへ変えます。
反面、全てのものを育みます。
この多いなる力を制御しようと人間がもくろみ命を狙われてしまいます。
猩々(しょうじょう)
もののけ姫に出てくる猩々は猿人の姿をした森の妖怪。
非常に人間を嫌っていますが人間の力を欲しているようで、人間を食べてしまおうとしています。
中国では“猩々”とは霊長類を表します。
猩々はオラウータンの和名です。
チンパンジーは黒猩々、ゴリラは大猩々です。
ジコ坊・唐傘衆
印象的な役割を果たす“ジコ坊”と彼の部下、唐傘衆ですが、彼は当時の天皇の勅命を受けた工作員でした。
今でいう工作員てきな武装集団で、圧倒的な運動能力と組織力を持っていました。
ジコ坊は序盤から中盤にかけてアシタカとともに行動をしますが、これは
「個人では善良でも組織になれば冷たくなる」
という現代の日本人を風刺したキャラともいわれています。
こだま(トトロに進化?)
有名なキャラの“こだま”ですが、これが後のトトロになったという噂があります。
これは噂ではなく宮崎監督も認めていて、事実だそうです。
漢字では“木霊”と表します。
文字通り木の精霊です。
もののけ姫の舞台のモデルの一つ、屋久島の森で写真を撮るとこだまのような白くて小さなものが写る場合があるそうです。
森を守る小さな精霊なのですね。
スタジオジプリと「もののけ姫」
ここで、スタジオジブリと映画もののけ姫に関しての都市伝説について検証していきたいと思います。
税金対策の為に作られた?
本作が生まれた90年代後半、スタジオジブリはかなりの売り上げがあったようで、その分、納税に関しては会社としても色々と苦労をしていたようです。
そのため節税対策として本作ができたのではないかともいわれています。
この作品は、通常のアニメーションに比べて倍以上の作画枚数を要して作られました。
並はずれた物量と労力を本作品に宮崎駿監督はつぎ込んでいます。
まさにスタジオジプリの総力を注ぎ込んだ自信作なのですが、そのことが後になって、この作品が節税の為なのではと噂されることになったのです。
もののけ姫には別のタイトルがあった?
本作は元々宮崎駿監督が「アシタカ聶記(せっき)」というタイトルを考えていましたが、「もののけ姫」に変更されました。
このアイデアは鈴木敏夫さんから出たもので、ジブリ作品にはほとんど「の」という字が入っててインパクトもあることから「もののけ姫」にしたと言われています。
映画のキャッチコピー
このキャッチコピーは
「生きろ そなたは美しい」
です。
映画の公開当時、オウム真理教のテロなど様々な事件が起きていて、不安に満ちた社会に生きる人々への応援メッセージとして考えられたと言われています。
作中には「アシタカ、そなたは美しい。生きろ」というセリフ、多くの人々の心に響いたかもしれません。
因みにこのコピーの作者は糸井重里さんです。
他のジプリ作品との関係
本作に出てくるコダマというキャラはトトロの進化前の姿といわれています。
最後のコダマが数百年後のトトロになったのだそうです。
また、確証はありませんが、「千と千尋の神隠し」の千尋は、サンの子孫だという都市伝説もあります。
また、湯婆婆がハクを操る為に使った虫も「タタリ虫」と書かれていますが、もののけ姫のそれとは形が違います。
人間の内面を神話化?
本作は人の内面を神話化したのではないかといわれています。
哲学的な要素も多分に含まれていて、これぞジプリ作品の由縁です。
アシタカの成長しない内面と、不老不死という神話を融合させてしまった理解するには至極難しい表現をしています。
「生きることは成長する事」を伝えたかったのかもしれませんが、そういった話を宮崎監督は明言しておらずあくまで考察の一つでしかありません。
宮崎駿の転換期
本作は宮崎駿監督の転換期になったと言われています。
本作以降海外での配給はディズニ―が行うようになりました。
他にもこの作品以降、メインキャストに声優をつかわないようになったり、エンターティメント性よりも物語や人の生業など作品性の高いものを目指しました。
アシタカとサン
ジブリのキャラでも人気が特に高いアシタカとサンの二人、
二人にも様々な都市伝説があります。
今回はそれらついて、検証を行っていきたいと思います。
アシタカには許嫁(いいなずけ)がいた?
「もののけ姫」にはアシタカの許嫁のカヤが出てきます。
アシタカのことを強く愛していて、彼のために小刀をプレゼントしますがそのプレゼントはアシタカのもとからサンのもとに渡りました。
ちなみにカヤを演じる声優はサンと同じ石田ゆり子さんが担当しています。
アシタカとサンの恋愛事情。二人のその後とは?
アシタカとサンの恋愛事情についてですが、宮崎監督曰くその後は度々逢っているといわれています。
アシタカは、サンにカヤからの贈り物“玉の小刀”を渡します。
これはアシタカの決意と愛情の現れです。
一説には二人の間に生まれた子供が「千と千尋」に出てくる千尋の先祖ではないかともいわれています。
しかし、これらはあくまでもうわさ話です。
たたり神がアシタカに「呪い」を掛けた理由?
物語のきっかけになったアシタカが“たたり神”に呪いを受けた理由。
それはたたり神の前身で、猪神が相次ぐ森の破壊により、住む家を失い人間を強く恨んでいたからなのです。
そしてアシタカは村人の為にタタリ神と戦い殺めましたが、その代償に“死の呪い”を受け、故郷の村を後にすることになったのです。
ただし、その呪いは死の代償と引き換えに人間にはありえないような身体能力を与えました。
それは、後の戦いに大いに発揮されることになります。
サンはエボシの娘!?
サンはエボシの娘ではないかという話があります。
元々、倭寇(海賊)の首領の奥さんだったエボシは首領との間に授かった子供を山奥に捨て、それがサンになったのではないかという話があります。
それを山犬のモロが知っていて、サンを捨てたエボシを特に憎んでいたのではないかとも言われています。
サンのセリフの意味とは?DVD発売に影響
映画「もののけ姫」は人気の作品にも関わらずDVD発売がかなり遅くなりました。
これについては、サンのセリフ
「その喉切り裂いて二度とムダ口がたたけぬようにしてやる」
「私はお前がすきだ、でも人間が嫌いだ」
があまりにもメッセージ性が強すぎたのではという話が有ります。