
スタジオジブリの長編アニメーションとして2023年に公開された『君たちはどう生きるか』。
タイトルは吉野源三郎の同名小説に由来しますが、内容は原作とはまったく異なる、宮﨑駿監督によるオリジナルストーリーです。
その謎めいた映像と物語は、観る者の想像力を刺激し、「都市伝説」と呼ばれるような考察も数多く生まれました。
この記事では、それらの代表的な説を紹介しながら、作品に込められた可能性を探っていきます。
主人公は死後の世界にいる!?
多くの観客が最も気になったのが、「この物語は死後の世界の話ではないか?」という説です。
物語中、少年・眞人(まひと)は謎の“青サギ”に導かれ、不思議な世界へ迷い込みます。
そこは現実とは異なる時間が流れ、すでに死んだはずの人々が登場する空間でもあります。
その“根拠”とされる描写
- 母の死後に現れる青サギの存在(=死神的存在?)
- 入り口である「塔」が“あの世”への門に見える
- 現実では病死した母と再会するシーンがある
- 物語の終盤、現実世界に戻っても「夢だったのか? それとも…」と答えが提示されない
このような構成から、「これは生死の狭間にある“魂の旅”なのではないか」とする考察が広まりました。
宮﨑駿の遺作作品!?
この映画に込められているとされる、もう一つの有名な都市伝説が「これは宮﨑駿自身の人生を重ねた“引退の覚悟”を込めた遺作的作品」というものです。
この説の“裏付け”とされる要素
- 主人公の名前「眞人(まひと)」は宮﨑駿の名前「駿(はやお)」と響きが近い
- 絵本にしか存在しないような空想の世界=駿監督の創作の脳内を表現しているのでは?
- 最後に眞人が「塔の主の役目を継がずに去る」=宮﨑監督がジブリの創作世界を後進に渡す決意?
この説に共感するファンは多く、「宮﨑駿が自らの人生と創作への想いを、ファンタジーを通して遺そうとしたのでは」と感動をもって語る人もいます。
現実と幻想のあいだにある“戦争”の記憶
物語の背景には、第二次世界大戦の日本が描かれています。
眞人の父は軍需工場の幹部であり、眞人自身も空襲に遭った経験を持っています。
これにより、「戦争で傷ついた魂たちの象徴としてこの幻想世界が描かれている」
という説も登場しています。
青サギ=戦争の記憶の化身、
火事=東京大空襲、
塔=失われた歴史や記憶の墓標
といった見立てがなされており、「ファンタジーで包まれてはいるが、実は非常に重いテーマが内包されている」
と言われています。
まとめ:都市伝説は“物語を深く味わうための鏡”
『君たちはどう生きるか』は、明確な答えを提示しない構造の作品です。
そこには観る人それぞれが“どう生きるか”を問われる意図があるともいえます。
都市伝説的な解釈は、その余白を埋める形で自然に生まれたものです。
そしてそれらを通じて、観客自身が自らの価値観や死生観、人生観と向き合うこともまた、この作品が持つ大きな魅力なのかもしれませんね。